スト6は頑張っているが、結局努力以外の楽しみを提供できていない 新説格ゲー衰退論

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・「格ゲーは難しくなったから衰退した」は誤り説
たびたびこの主張がされますが、適切ではないと感じます。根拠として、アホみたいにゲームスピードが速いApex Legendsや操作が忙しすぎるフォートナイトが大量の非コアゲーマーを獲得したからです。

 

スト6はモダン実装、充実した習熟システムの作りこみで、ゲームが盛り上がるために相当頑張っています。しかしながら、結局メーカーもコミュニティも「努力してうまくなる、強くなる」以外の楽しみ方をほとんど提供できていません。その辺はアークの格ゲーが頑張ってるイメージがあります。カプコンはプロシーンとライト層のヒエラルキーだのなんだので盛り上がりを達成しようとしているらしいですが(スト5時のカプコンの発表)、そのへん以外の遊び方にも力を注がないと結局今のストロクの盛り上がりはスパ4AE2012の盛り上がりより一時的に一回り二回り大きくなったなくらいで、持続性がないものになるんじゃないかと予想します。

 

・最近のヒットした対戦ゲームは「ランクマッチを戦場に努力してうまくなる、強くなる」以外の楽しみ方にも力を注いでいる
対戦ゲームに努力以外の楽しみ方なんてあんのかよと対戦ジャンキーは感じるかもしれませんが、むしろこの分野こそライト層へのリーチとしてすごく重要です。例えばApex Legendsではプレイのうまさや知識以外の動画も再生数が回るし、クリプトのドローンにアークスターつけて敵に特攻してみたみたいなネタ動画も伸びます。スプラトゥーンのサーモンランのようなPVE要素など、対戦以外のやりこみ要素がある対戦ゲームも存在します。

 

格闘ゲームの弱点

そもそもゲームの面白さは努力と成功と報酬、世界観の体験、主にこの2つがある考えています。

 

・努力と成功と報酬
優れたゲームは、攻略を考えうまく敵を倒したり指令に成功したりすると映像効果やSEで即座に褒めてくれます。例えばApex Legendsで、敵に射撃を当てるとダメージが気持ち良く表示され、敵のアーマーを割ると爽快な音が鳴ります。

・世界観の体験
ストーリー、キャラクター、舞台のデザインでプレイヤーを魅了する要素です。例えばスプラトゥーンでは、インクリングの世界を歩かせたり、一人用モード内のフレーバーテキストを読ませたり、イカしたファッションという概念がそのまま装備につながったりすることで、普通にプレイしてるだけで世界観を触るように体験させられます。もうひとつPUBGでは、爆撃で半壊している住居や軍事施設が点在する島で戦うことになりますが、それらはただ鑑賞するだけでなく爆撃でできた家の穴は通路に、崩れた塀などは遮蔽物として使用することが可能で、戦闘すること自体が世界観を感じさせるオブジェクトに触れる事になります。


格闘ゲームは努力と成功と報酬の表現を頑張ることはできますが、世界観の体験を伝える手段が非常に乏しいです。結局、何もない狭い箱の中でしかキャラを動かせないし、世界観を感じさせるオブジェクトに触れることができないからです。もちろんこれは、格闘ゲームのルールを守る以上突破できない制限なのは言うまでもありません。ゲーム性と世界観の体験をリンクさせる良いアイデアもまだ生まれていません。
 と、言うと、ではかつて格闘ゲームがあそこまでの栄華を誇った理由が説明つかないじゃないかと指摘したくなるかもしれません。格闘ゲームは「ゲーム内の」世界観の体験を表現する力は乏しいですが、コミュニティの盛り上がりがそれらを代わりに担う役割を持っていました。ゲーセン文化、闘劇、ストリーミングとの相性の良さ。ここらへんです。

 

・新説格ゲー衰退論
私が主張したいのは、格闘ゲームが衰退したのはゲームの面白さの大事な要素であるゲーム内の世界観の表現手法が昔から変わっておらず、そもそも楽しませるためのゲームとしては表現不足でありカプコン側もそれを補う努力を怠り始めたからだということです。世界観の表現の乏しさを補うものとしてコミュニティの盛り上がりが代役を担えますが、それはゲームの中に作られた世界観と違い固定ではないので継続が困難です。ゲーム内で世界観を表現しきるのはかなり難しいので、案としてメーカーはもっと積極的にゲームの世界観を感じられるものをゲーム外コンテンツとして出していくべきだと思います。例えば公式コミック、イラスト。スト6にはジェイミー、ルーク、ラシード、エドなどといった人気の若い男衆がいるので、そいつら使って箱みたいな感じにしたらいいんじゃないかと思います。